「の制服姿も今日で見納めか」 空いた皿を重ねながらイタチが呟くと、京香はその顔を覗き込みながら愉快そうに言う。 「ご要望があればいつでも着て来ますけど?」 「やめとけよ、見苦しいだろ」 フォークを片手に、サスケをキッと睨んだ。しかし、すぐにその表情を和らげた。 「どこかの誰かがどんなに生意気な口を叩いても、今日だけは許してあげる。私のためにこーんなに美味しいケーキを買って来てくれたから」 イチゴにたっぷりのクリームを乗せて口に含んだは、「おいしー」と体を揺らす。 イタチの作った料理を食べ終え、息つく間もなくケーキに手を付けたは、「このチーズのも食べて良い?」と、ショートケーキを頬張りながら尋ねた。イタチは「今日の主役はだからな」と許したが、サスケは「だからお前は太るんだ」と意地悪く笑った。は、ぐうっと喉奥を鳴らしただけで、サスケに飛びかかるのを何とか堪えた。 「。来月の入学式、一緒に行かないか?」 まるで話題を変えるかのように、イタチがモンブランを皿に取りながら言った。 「え?大学院も式の場所、同じなの?」 「ああ」 「へえ。うん、一緒に行こ」 なんだよその顔。にっこりと笑むの横顔を盗み見て、サスケは小さく舌打ちをした。すると不意にがこちらを向いた。サスケはとっさに視線をそらし、皿の上のチョコレートケーキを突く。 「サスケも来る?」 「……行くか。なんで俺がお前と兄貴の入学式なんかに」 「えー?来てよ、カメラ係りがいないと困るよ」 カメラ係り。サスケは途端に脱力して、フォークを取り落としそうになった。 「おばさんに任せろよ」 「お母さん仕事で来れないもん」 「おじさん」 「仕事」 「……何日?」 「4月1日」 「部活」 即答したサスケに、それでもは手足をばたつかせながら食い下がる。 「休んでよー!バスケの練習と幼なじみの記念すべき入学式とどっちが大事なのー?」 「練習。俺キャプテンだし」 悔しそうな唸り声を上げながら、はサスケを睨み上げる。その様子にサスケが「ガキ」と言えば、ついには飛びかかった。それをイタチが「写真なら俺が撮ってやるから」といさめる。 「でも!二人で写りたいじゃん!」 「それなら周りの人に撮ってもらえば良いだろ?」 サスケの耳をつまみ上げたままの状態で、はイタチの言葉にしぶしぶ頷いた。サスケは、イタチととを交互に見やる。俺は絶対行かねぇ。固くそう決め、の頬をつねった。いったあい、と情けない声が上がる。 (2011.6.12) |